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税務実務

社宅制度を利用した所得税節税と社会保険料節約

社宅を利用することで、社会保険料や所得税の節約ができるかもしれません。お客さんから問い合わせがあったので、記事にしてみます。

社宅とは、そしてなぜ節税節約になるか概要

社宅は会社(雇用者)が提供する住宅で、会社が一定割合払う(東京で家賃20万とかなら9割くらいはいけるかも)代わりに給与額面を同額下げることで、所得税の基礎となる給与所得額や社会保険料の基礎となる標準報酬月額を引き下げることができる可能性があるからです、

細かい税制上のルールはいろいろあり、役員の場合であればとか、あまりに奢侈と考えられる住宅の場合などの場合分けがあります。また、そもそもの効果として、所得税の減額効果は当然に人によって異なります。
そして、社会保険料が減額されるということは、厚生年金の掛け金額が減少しますので、老後の厚生年金保険の受給を期待している方にとってはネガティブな側面があります。私は自分の世代が日本の厚生年金保険の恩恵にあずかることは難しいという風に認識しているなどありますが、これについては各々で考えていただければと思います。厚生年金保険に期待していないのであれば、現役時代の掛け金額の減少はポジティブだと思います。
記載時点の2023年1月の時点では税制的に問題ないものと理解していますが、個別ケースによる否認や、時の経過による制度の変更にはご留意ください。

社宅を利用した節約効果の計算設例

ざっくりとした効果についてここでは記載します。税務上の効果と社会保険料上の効果の二つを合わせて記載します。

設例前提

給与月額75万円
家賃25万円(社宅時の個人直接負担額5万円)
各種控除があると思いますが、計算は超ざっくりです。あくまでも効果を理解するため。

社宅なし

年収900万円、所得税・住民税120万円、社会保険料125万円で、給与手取りが655万円となります。ここから家賃年間300万円を引くと、家賃後の手取り額は355万円になります。

社宅あり

年収は給与月額が75万円ではなく、20万円分を社宅家賃として会社に払ってもらうことから月額55万円となり、660万円となります。所得税・住民税は60万円、社会保険料95万円となり、給与手取りが505万円となります。ここから家賃年間5万円*12カ月の個人負担分の合計60万円を引くと、家賃後の手取り額は445万円になります。

節約計算まとめ

以上が、給料をもらう側のメリットを数値化したものとなり、この設例であれば、90万円ほどの手残り差がでました。年収900万円がスタートとかんがえるとかなり大きいです。

会社としては、給料を月75万円払うのか、給料55万円と家賃20万円の合計75万円払うのかで経費額は変わらないように見えますが、実は社会保険料を折半しているので、ざっくり同額の年額125万円と95万円がそれぞれの場合の会社負担額ということで30万円ほど差額がでており、会社にとっても有利であることがわかります。(ただし、会社は利益が増える分だけ法人税等が増えます)

特に一人社長をやっているような場合は、給与をもらう個人としてのメリットと会社としてのメリットを両方取れるメリットがあります。また、一人社長の場合は、どちらにせよ自分の家の手続きを自分でやるという話ですので、手間については苦にならないのではないでしょうか。

まとめ

従業員が他にいる場合に同じような便益を提供しないといけないのではないか、そもそも個人負担割合が実は税務上はちゃんと計算しておかないといけないなどのハードルはありますが、社宅による個人の税金と社会保険料および会社の社会保険料の節約というのは有効だと思います。
私自身は外資系金融機関に転職したときにこの制度があり、聞きかじってはいたけども、これは本当にいいものだなぁと思った次第です。ということで、それなりに大きな会社でも導入されている制度ですし、制度の悪用とかいう話ではないものと私は理解しています。

実際の導入・運用については、税理士と相談しながらが良いと思います。